ハブ空港・ゲートウェイ空港とは
ハブ空港・ゲートウェイ空港とは
よく「ハブ空港を目指して」という言い方をすることがあります。ではハブ空港とは何であるか?発祥の地であるアメリカを例に見ていきます。
旅客にとって一番都合がいいのは出発地と目的地が直行便で結ばれていることです。ですが、あれだけ広い国土ですから、全てを直行便でまかなおうとすると膨大な数の航空機が必要で、とてもではないですが不可能です。また、アメリカ大陸を横断する路線に用いる航空機は5000km程度の航続距離が必要で、今でこそ200人乗りのB757-200や150人クラスのB737-700やA320でもそれだけの航続距離を持っていますが、昔は300人乗り位の大きさの航空機(DC-10型機が代表例でしょう。何しろアメリカ大陸を無着陸で横断できることがコンセプトになっていたくらいですから)となってしまい、需要を考えると、おいそれと大陸横断路線などは開設できませんでした。そこで大体アメリカ中部か中東部(大きい都市が東部の方が多いためです)に乗り継ぎの ための拠点空港をを設け、そこと全米とを空路で結んで、その空港で乗り継いでもらおうと考えたのでした。そして重要なのは、ただ路線が集まっているだけではなく、乗り継ぎ時間を短縮するために、ある一定時間に一斉に到着便が集中し、しばらく時間が経った後には、また全米へ向けて一斉に飛び立っていくという運航方法を編み出したのです。これが「ハブアンドスポーク」といわれる運航方式(つまり、ただ路線が集まっているだけではハブ空港とはいえません。例えば、羽田空港は日本中から路線が集まっていますが、ただ集まっているだけなのでハブ空港とはいえません)で、大手各社が導入していきました。下図に例を示します。
この例ではシカゴをハブとして全米と路線が結ばれています。利点としては
- 最大の利点が搭乗率を上げられることです。例えばボストン発シカゴ行きの便ではシカゴが目的の乗客もいますが、(シカゴで乗り継いで)デンバーやロサンゼルスなどに向かう旅客がいますし、同様にシカゴ発ロサンゼルス行きの便ではシカゴからの旅客もいますが、ニューヨークやボストンなどからの乗り継ぎ客もいますので、搭乗率を上げられます(逆にボストン発ロサンゼルス行き直行便ではボストンからロサンゼルスに行く乗客しか搭乗しないので、採算点に乗せることが難しくなります)。そして旅客動線を追いかけていれば「この都市間は直行便を運航しても採算が取れる」と分かってきます。もちろん乗客の多いロサンゼルス−ニューヨーク線などの「トランス・コンチネンタル路線(大陸横断路線)」もないわけ� �はありません。
一方欠点としては
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- 乗客に乗り継ぎを強いる。
- 本当は近いのにハブ空港経由となって距離的ロスが発生することもある
- ハブとなった空港の負担がものすごくかかる(着陸待ちの空中待機や離陸待ちの誘導路での行列が出来たり、また空港従業員の配置も問題となります。通常時を基準にすれば乗り継ぎ時間帯は全く人が足らないでしょうし、逆に乗り継ぎ時間帯を基準にすると、通常時は余剰人員が出てしまいます。
また、ここで重要なのは大陸の端のニューヨークやロサンゼルスはハブ空港にはなり得ないということです(距離的ロスが発生するため、こうした端の地域の空港はハブ空港にはなり得ません)。もっともそうした端の空港は、アメリカに入ってくる旅客を受け入れ、全米各地へと入国者を送り届けるためには最適� ��、「ゲートウェイ空港」という言葉が使われています。つまり、ゲートウェイ空港とは地域外から来た旅客を地域内の他の都市に送り届ける(また、地域内の旅客を集めて他地域に送り届ける
日本の空港はゲートウェイ空港には適しているが・・・
日本は極東ロシアを除けばアジアの中でも東の端に位置しているといっていいでしょう。そうするとアジア間を移動するために乗り継ぐ「ハブ空港」には地理的に不適当であることはすぐに分かるかと思います(日本を経由したほうが航空代金がよほど安く上がるとか、あるいはマイル稼ぎでわざと遠回りというのであれば別です)。東アジアと東南アジアを結ぶハブ空港としては、地理的に言えば中間点の「香港」や「フィリピン」の空港が適していますし、東アジアと西アジアを結ぶハブ空港には、「タイ」や「シンガポール」などの空港が適しています(ちょっとシンガポールは南過ぎるかもしれません)。
つまり日本は、南北アメリカとアジアを結ぶ、アジアの入り口としての「ゲートウェイ空港」という立場がぴったり来る地理的な位置にあります。もっと細かく言うと、アジアのほうはせいぜい東南アジア(シンガポールやデンパサール程度)まででしょう。それより西となるとおそらく大西洋経由になるでしょう。その他の地域(ヨーロッパやアフリカ、中東など)の航空会社から日本を見れば紛れも無く「終点」ということになります。下図に例を示します。
ここでは名古屋がゲートウェイになっています。アメリカから来た旅客は名古屋で乗り継ぐことでアジアの各都市や(図にはありませんが)日本各都市に乗り継ぐ事が出来ます。
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国内線と国際線の乗り継ぎ空港と国際線同士の乗り継ぎ空港は?
まず、国内線から国際線に乗り継ぐため(あるいはその逆)に便利な空港とはどのようなものでしょう。まず、乗り継ぎのために逆方向に行く(北海道の人がアメリカに行くのに一旦関西へ行くなどのパターンです)のは好まれない可能性があります。そうするとアメリカ・ヨーロッパ方面の乗り継ぎのために、例えば新千歳空港、アジア方面の乗り継ぎのために那覇空港というように二つの空港を使うというのが良い、という考え方があります。しかしそれでは国際線同士の乗り継ぎをする人は日本に一旦入国して国内線で両空港間を移動するということはどのように考えても好まれないでしょうから、真ん中当りの中部や関空を国際線同士の乗り継ぎのための空港にするという考え方ができるでしょう
では三空港も乗り継ぎ空港を運営できるのかというと苦しいのではないでしょうか。日本はアメリカや中国ほど広くないので、国内住民が海外に出るときに起こりうる逆方向への移動については少し妥協してもらい、やはり日本中心部に国際線同士・国内線と国際線の乗り継ぎ空港を作るという選択になるでしょう。
まず羽田及び成田空港はどうするかについ見ていきます。前提として現状では国内線空港と国際線空港として分かれているのが重大なマイナスポイントで、地方の方には東京乗り継ぎが好まれず、結果韓国の仁川空港乗り継ぎなどに流れている現状があります。また運航スケジュールも午前発アジア線などが多く、成田空港は、「首都圏住民の外国への空港」といった感じです。その首都圏住民も成田の遠さから羽� ��発と成田発の両便が選べる都市では羽田発に人気があるようです。ですが実は市街地からの距離の遠さというのは、「そこが出発地あるいは目的地の人には重大な問題であるが、そこが乗り継ぎ地の人には関係ない(飛行機でやってきてそのままそこから飛行機で立ち去ってしまう為)」という性質があります。そこであえて羽田・成田を使うのであれば、「羽田は目的地空港、成田は乗り継ぎ空港」とする使い方があるでしょう。ただし、羽田・成田空港を乗り継ぎ空港とすることは首都圏のただでさえ多い需要で施設の容量が逼迫しているのに、そこにさらに乗り継ぎ客が来るようではいくら拡張しても足りません。その意味では「羽田空港」と「成田空港」は国内・国際乗り継ぎのための空港としては最もふさわしくな いといえます。しかも既存の航空会社も両空港を乗り継ぎ空港ではなく、出発地・目的地空港としてスケジュールを組んでしまっている為、それを混雑しきっている今更乗り継ぎ重視のスケジュールに変更するのはまず不可能でしょう。
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では首都圏空港以外ですが、関西空港は同時離陸・同時着陸の可能な2本の滑走路を持ち、また24時間空港でとりあえずは資格はありますが、高い建設費で結果として着陸料などの航空会社にとって避けられない費用が膨らんでしまっている現状では採算を採るのが難しく、また国内線も伊丹空港に人気があり、前途は厳しい模様です。日本の航空会社は諸費用の高い成田や関西空港を拠点とせざる得ず、どうしても不利な状況です。このことは全日空の国際線就航都市を見れば中国やロンドン、ニューヨークなどビジネス客(上級クラスや正規運賃などの高額運賃を払ってくれる乗客でもあります)が多く乗ってくれそうな路線ばか� �になっていることからも伺えますし、関西発着のオーストラリア線は本体のカンタス航空ではなく、格安航空会社のジェットスターが就航していることからも伺えます。
なお、以下は私の妄想ですが、神戸空港の位置に関西国際空港を作り、新幹線を関西空港経由にして(新神戸駅を移転する)、北陸特急も関西空港発着にするというのが理想でしょう。やはり東海道本線沿線のほうがよかったのではないでしょうか。かなわぬ夢なので、直下に新幹線が走る静岡空港に新幹線駅を作るという策もあるでしょう。少なくともいえることは成田・羽田・首都圏第三空港以外の地域にする必要があります。
ハブ空港争いとポイントtoポイント
皆さんの中には「ハブ空港争い」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。事実日本周辺では「ソウルの仁川国際空港」や「上海の浦東国際空港」などの大型の空港が次々に建設されています。一方表題の「ポイントtoポイント」はある種対立する概念で、中・小型機でさまざまな空港間を直行便で結ぼうという概念です。この概念はB767クラスでありながら航続距離の非常に長い(15000キロを超える)「B787型機」がすでに製造を開始していることでさらにこの流れは加速しそうです。実はこの「ハブ空港争い」はある条件が満たされるまで「一時休戦」という状態です。この争いは
次世代超音速旅客機路線が就航する
ことにより決着することになるのです。つまり超音速旅客機が就航している空港が「ハブ空港」となり、その地域(「東アジア」のようなブロック)の他の空港は地域間路線こそ運航していても地域をまたぐ路線(東アジアとアメリカなど)を利用する旅客をそのハブ空港に取られてしまうということになるのです(もちろん従来の旅客機による地域をまたぐ便も低価格便としては残るのでしょうが)。超音速機就航のために超えなければならないハードルはまだ高く(衝撃波−ソニック・ブームの解決が最大の問題点ですが、このことに関しては、その他雑学集「超音速旅客機コンコルド」をご参照下さい)、はっきりいって就航のめどはまったく立っていないというのが現状です。そのため、それまではやはりより所要時間の短い直� ��便を望む旅客が多いと考えられ、「ポイントtoポイント」の考え方が優勢になる可能性が大きいです。ですが、多くの国で超音速旅客機の就航に備えて大規模空港を建設・拡張しています。
次世代超音速旅客機就航後のハブ空港大予想
超音速旅客機については先ほども出た、その他雑学集「超音速旅客機コンコルド」に譲るとして、次世代超音速旅客機が寄航するハブ空港がどこになるのか、大胆にも予想したいと思います。なお、航続距離は十分に大きい(B747-400やB777クラス)わけではないという前提で話を進めさせていただきます(そこまで大きいとさすがに制約が小さくなり予想できません)。
まず簡単なところから行くと、おそらくオセアニアは「シドニー」が当確となるでしょう。そうするとオーストラリアとの関連の深いイギリス(航空路線においては過去の植民地時代の関係などに深い関連があったりします)、その首都ロンドンにも就航することなるでしょう。また、その経由地として、東南アジアのタイ・シンガポール・マレーシアのどれかにも就航することは濃厚です。
次にシドニーからアメリカ方面ですが、これは非常に距離が長いです。航続距離が十分にある旅客機になれば別ですが、おそらくいったんホノルルを経由することになるでしょう。よってホノルルは就航空港になる可能性が高いです。そうすると米国ではニューヨークとサンフランシスコかロサンゼルス、そしてホノルルの3箇所に就航するのではないでしょうか?
では私たちが住む極東・東アジアはどうなるのでしょうか?これも航続距離が深くかかわってきます。仮に航続距離が9000キロ程度だと仮定すると、お互いに端にあるアンカレッジやホノルルと、東京やソウルなどの直行便程度しか開設できません。しかし同距離が10000キロであれば西海岸のサンフランシスコやロサンゼルスに直行できますし、またアンカレッジやホノルルから上海や香港に直行することも可能になるでしょう。
またヨーロッパ方面から考えてみるとおそらくモスクワ経由を取るでしょうから(南廻りやアンカレッジ経由よりも必要となる航続距離は少ない)こちらの方面からは確定するわけには行きません。
ほかにも中東・南米とアフリカも1箇所は就航空港があるでしょう。このようなことから世界のハブ空港争いが繰り広げられているといえるのです。
国・航空会社・空港の三点セット
週間東洋経済の2007年4月7日号の特集「世界で一番信頼できるエアライン」の中で、「人気空港、航空会社に秘密あり!」と題して、ドバイを拠点とするエミレーツ航空とドバイ空港またチャンギ空港についての記事があった。いずれも乗り継ぎ空港として名をはせている空港である。ここでは「航空会社と空港の二点セット」となっていたが、私はさらに国を含めた三点セットで考えたい。
日本の空港について考えてみると正直言って、「全滅」と考えている。まず日本の航空会社は乗り継ぎ需要のことを基本的に考えてこなかった。次項のゲートウェイとしての利用例(成田空港編)でも書くが、乗り継ぎのためにはアジア方面とアメリカ方面の出発時刻を夕方にそろえる必要があるのだが(当然到着時刻を午後にする必要がある)、現実の成田空港では主にアジア方面は午前出発、アメリカ方面は午後出発と分かれているため乗り継げない(午前にそろえるとなると機材繰りや現地発便の出発時間から考えて厳しそうである)。すでに書いたが、首都圏の需要に対応している間にスロット(発着枠)が埋まってしまい、今更パンナムの後を引き継いだユナイテットやノースウェストのように運航するのは不可能である。一� ��、外国航空会社の場合は国が絡んでくるつまり、「以遠権を積極的に与え、また他国を経由する便において、「経由地までの乗客を認めず、通しで乗る人しか認めない」といった制限を設けない(中東便やエジプト便が直行便になっているが、もしかしたらこのことが影響した可能性がある)事が重要であるが、仮にそうであってもやはりもう混雑しきっている空港では無理な話である。
また空港設備の方であるが、一般区域と制限区域でも書いたように、国際線同士の乗り継ぎ客は国際線制限区域内しか行動できないため、この区域の施設の充実が最も重要となる。免税店のみならず他の一般の店、飲食施設、娯楽施設、トランジットホテルなどがそろってはじめて乗り継ぎ客がそれなりの時間を快適に過ごせるのだが、点検してみる必要がある。もし仮に可能であれば少なくとも搭乗3時間以上前に出国審査を通過して航空会社のラウンジを使わず(これも重要)、快適に過ごせるか検証してみたほうがいいだろう。成田空港は両ターミナルに免税店街を揃えたが、レストランや一般ショップはどうであろうか。もう一度念を押すが、羽田空港の「ガレリア」や中部空港の「スカイタウン」・「展望風� �」などの一般区域施設は対象外である。
どちらが先かという点で(乗り継ぎに便利な便が無いから施設が増えないのか、施設が貧弱だから乗り継ぎに便利な便が増えないのか)議論があるだろうが、このままでは「利用客がゲートに直行するため施設が赤字でやっていけない」あるいは「施設が貧弱なため乗り継ぎ客が暇を持て余す」といったことになるとも限らない。船舶及び航空機が鉄道とバスとは根本的に異なる点として、国内のことだけを考えていればいいのではないという点がある。原状の日本では、一部の地域の住民以外は日本以外の空港を乗り継ぎ拠点としたほうが便利な状況にある。このことは本来日本に落ちる金が他国の手に渡っているということで、国力とも関係する。もし日本をアジアのゲートウェイにしたいのであれば真剣に検討しなければならない� ��ろう。
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